ナリカタデザイン相談室

視点転展

2022大阪の水族館「海遊館」で開催される特別展のロゴ・サイン・ビジュアルデザイン
  • CLIENT
    海遊館 | Loftwork Inc.
  • CATEGORY
    Movie | Logo | Signage
こんな相談
「視点の多様性」をテーマにした、水族館の特別展。生き物たちが認識している世界の違いや、視点や感覚の多様性を伝える展示の世界観を、海遊館プロジェクトメンバーや様々なジャンルのクリエイターと共創して作り上げたい。
大阪の水族館「海遊館」で、2022年7月14日(木)から約1年半にわたり開催される特別展「視点転展(してんてんてん)~色んな見え方、感じ方~ 」。海遊館の新しいチャレンジとして構想され、コロナ禍を経て2年以上かけて実現した「視点の多様性」をテーマとした特別展です。
ヒトと他の生き物たち、そしてヒト同士においても見え方・感じ方は同じとは限りません。わたしたち人間を含めた生き物たちが認識している世界の違い、視点や感覚の多様性を感じる試みを散りばめた展示です。

ナリカタデザイン相談室では展示タイトルロゴと空間サインデザイン、展示映像のモーションデザイン等のビジュアルデザインを担当しました。
タイトルロゴは「視点の多様性」という展示のテーマを表現するために、見方によって文字の立方体の向きが変わって見える錯視の仕掛けを取り入れました。立方体が重なったように見えるロゴの形状は、木枠のキューブ型什器で構成された展示空間のデザインとも連動するイメージをもたせています。
展示空間は木枠でできたキューブ状の什器や装飾を用いて構成されています。ひとつのキューブは、ひとつの生き物の命とその世界のメタファーであり、大小様々なキューブをつなげて展示空間をつくることで、すべてのものがつながって世界ができていることを表現しています。
エントランスゲートには、ロゴがそのまま立体になったような「視点転展」4文字のキューブ型オブジェを設置。1文字ごとに光ったり回転したりする仕掛けを施し、空間のアイキャッチの役目を持たせています。
展示エリアは大きく3つ。一つめは「水とは?」などのひとつの大きな問いに対して、生き物の視点と鑑賞者自身の視点を比較して考える展示エリアです。「色んな視点」を空間の中で体感できるよう、ダイナミックに色彩を使い分けています。
壁面の文字は印刷ではなく手描きでペイントして強さを持たせ、問いかけの言葉であふれた展示空間を作りました。海遊館プロジェクトメンバーや展示に関わるクリエイターたちもペイントに参加し、唯一無二の空間を大切に作り上げました。
テーマにちなみ、水をすくう道具である「タライ」をサインの素材として使用し、空間を演出。
展示コンテンツのひとつ、「フジツボと考える、おとなっていつから?」。スロットを回して言葉を組み合わせられる展示になっています。
鑑賞者が自ら言葉を発見しながら能動的に展示を楽しむための仕掛けを施し、答えは一つではないことを伝えています。
メイン展示の裏側の壁には、各生き物の担当飼育員が、それぞれの生き物に対する思いや知ってもらいたいポイントを詰め込んだ手書きのキャプションを展示しました。
二つめの展示エリアは、生き物の多様な見え方を擬似体験しながら想像をめぐらせる「体験」のエリアです。
人間以外の生き物には熱帯魚が入った水槽がどのように見えているか、想像しながら体験できる展示装置は、色んな見え方を表す5色でカラフルに色分けしました。
展示空間の奥に進むにつれてサインの色彩を少なくし、キャプションの文字サイズも小さくしています。徐々に鑑賞者に自分自身との対話を促す空間構成になっています。
空間内には手描きでペイントしたキャプションや、古い木材で制作した文字オブジェを配置。物体としてのサインに、印刷だけでは表現できない手触り感や強さをもたせました。
進行方向とは逆向きに振り返った時にだけ見える、遊びの要素としてのサインも空間に散りばめました。
三つ目の展示エリアは、さまざまな生き物のリズムを、光と触覚で感じる「リズム」のエリア。ゆらぎのリズムや食事をするリズムなど、生き物の様々なリズムをライトの明滅で表現しています。聴診器で鑑賞者自身の心拍をとり、ライトでリアルタイムに鼓動を再現し、他者に触れてもらう体験ができる装置が設置されています。
暗い空間の中で鑑賞者が展示体験に集中できるように、サインは最小限の情報を、既製の打刻テープを用いて小さなサイズで表示するに留めました。印刷ではなく一文字ずつ打刻するテープの文字で、シンプルながら人の手の跡をわずかに感じさせる表現をしています。
展示の出口までの通路に設置された制作後記のエリアは、印刷されたサインパネルとベニヤ板素材や手書きパネルを組み合わせて、舞台裏のようなバックヤード感を演出しました。
展示空間内で投影する映像のために制作したモーションロゴ。海遊館にいる生き物と視点転展のロゴを組み合わせ、生き物たちがわたしたちの「してん」を「てんてん」させてくれることを表しています。

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